リスキリング

リスキリングの今:企業の取り組みと課題、そして効果的な改善策

公開日:2024.10.25
2021年の末ぐらいから、日本のデジタル化をテーマとした政府主宰の有識者会議ではリスキリングの推進が強調されてきました。それ以前からも、アメリカにおけるGAFAMや中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)のような世界レベルで巨大な影響力を持つプラットフォーマーが日本にないのは、デジタル人材の不足が原因だと問題になっていました。
特にDX(デジタルトランスフォーメーション)においては、施策のPDCAを高速に回して試行錯誤を繰り返す必要があります。ベンダーに依存しているとスピード感も維持できませんし、コストもかかります。その結果、どうしてもベンダーの力を借りなければ進まないこと以外は内製化しようという動きが出てきました。また環境やツールを整備しつつ従業員の教育も実施し、現場部門のユーザーができる限り自力でデータを活用するという「民主化」の取り組みも並行して進みました。
こうした背景の中、企業におけるデジタル人材の需要は高まる一方です。しかし採用だけでまかなえる状況になく、既存人材のリスキリングが必須となっています。この記事では、専門企業が提供しているリスキリング研修を独自の視点でまとめ直し、社員研修を企画・実施される方々に向けた情報とまとめています。

リスキリング研修を検討されている方を対象にし、無料で自社にあった研修をリサーチ提案する取り組みもありますのでご興味がある方はご相談ください。

リスキリングとは

リスキリングとは、従業員がこれまでとは大幅に違うスキルを自発的に獲得すること、あるいは雇用側が獲得させることです。リスキリングの目的は後述するようにいくつかありますが、従業員が価値を生み続けるために業務や職種の転換が必要になり、そのためのスキルをできるだけ早く身につけるということでは共通しています。
DX推進などの企業変革の一環として実施されるものであり、基本的にすべての従業員が対称となります。データサイエンティストやAIエンジニア等の高度デジタル人材の育成も含まれますが、これらは一部であり、それ以上の広がりがあることに注意が必要です。
「これまでとは大幅に違うスキル」の獲得が目的ですので、いわゆるスキルアップとは違います。リスキリングと似た言葉にリカレント教育がありますが、これとも違います。リカレント教育は、職場と学校とを行き来しながら、仕事のスキルを高めていくもので、長期的な視点でビジネススキルを向上していくものです。一方リスキリングは数カ月~1年といった比較的短期間でのスキル獲得が求められます。

なぜリスキリングが注目されているのか

1つは、本格的なDX推進やAI活用の必要性が高まっているからです。これらは業務変革に該当し、バリューチェーン上のすべての業務が変化します。あらゆる部門が変化するので、全社員が対象となるリスキリングが必須になるのです。
またDX推進やAI活用においては、前述した通り施策のPDCAを高速に回さなければなりません。したがって業務の先端や顧客接点にいる従業員がデジタル技術を活用して即座に対応することが大切になります。それができるようになるために、リスキリングが必要になるわけです。
現場の従業員だけがデジタルリテラシーを身につければよいわけではありません。彼らとコミュニケーションを取る必要がある経営者・管理職にも、コミュニケーションの前提としてのデジタルリテラシーが不可欠です。したがって経営者・管理職のリスキリングも求められます。

データサイエンティストやAIエンジニアのような高度デジタル人材もリスキリングが必要です。現場の従業員や経営者・管理者とビジネスに関する会話を直接する機会が増えるからです。ビジネス知識やビジネススキルを身につけるためのリスキリングが必要になります。
変革を志す企業においては、リスキリングから逃れられる人はいません。これがリスキリングを「自分ごと」として注目する人が増えている大きな理由です。

リスキリングにおける共通の課題

リスキリングが注目されているにも関わらず、なかなか進まない企業も多く見受けられます。これらの企業に共通する課題は何なのでしょうか。
出典:「令和2年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(デジタル人材政策に関する調査)調査報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000248.pdf
まずDX(以下、AI導入等も含めた意味でこの言葉を使います)推進の必要性に対する経営者の認識不足や、DXの前提となるビジョンや戦略の不明確さが挙げられます。その結果DXに必要な具体的なスキルが不明瞭になっており、必要な能力の定義ができません。当然ながらが能力評価もできません。
リスキリング以前にデジタル人材育成の土壌ができていないということです。また、DX推進をITベンダーに委託すればよいと考える経営者や従業員も多く内製化も民主化も進まず、リスキリングの機運が生まれません。
出典:「令和2年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(デジタル人材政策に関する調査)調査報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000248.pdf
こういった考え方がいまだに根強く残っている背景としては、日本においてはITが既存ビジネスの効率化や改善の道具として位置付けられてきたことが考えられます。ITがビジネス価値を生む源泉と捉えられてこなかったため、生産や営業といった直接価値を生む職種と比較してデジタル人材への処遇がどうしても低くなりがちでした。
しかし今後は、ITそのものがビジネス価値創出や業務変革のための武器となります。このことを経営者から従業員まで全社員が認識し、自社に必要なデジタルスキルを明確化できれば、リスキリングはおのずから進んでいくのではないでしょうか。

リスキリング成功のためのステップ

リスキリングを進めるにあたっては、まず経営者自身がリスキリングに取り組むことが望ましいです。経営者が自社の経営課題の解決や経営戦略の実現にDXやAIがどのように役立つのか理解しなければ、DX(以下、AI導入などを含めてこの言葉を使います)推進が地に足がついたものにはならないからです。またこうした理解がなければ、変革においては必ず現れる抵抗勢力に対しても説得力のある説明ができません。事実、DX推進に先行している企業では、経営者自身が積極的に学んでいることがほとんどです。
経営者のリスキリングは前提として、より関心が高いのは従業員のリスキリングについてでしょう。リクルートワークスによれば、リスキリングの目的にかかわらず、大きなステップは以下の4つです。
  • まずは従業員のマインドセットを作る
  • モチベーションが高まってきたら実践的な学習の機会を創出する
  • 学習が軌道に乗り始めたら、さらに学習を加速させる
  • 最終的には組織風土に落とし込むことを目指す
ステップは同じでも、具体的な内容はリスキリングの目的によって少しずつ違ってきます。目的は、大きく3種類あります。
  • 使いこなし:これまでとは違う仕事のやり方ができるようになること
  • 変化創出:デジタルで問題解決できるようになること
  • 仕事転換:職種が自体が全く変わるのに対応できること
リスキリングの目的を明確にし、その目的にふさわしい施策を実施していくことが重要です。
なおリスキリングは冒頭に述べたように、政府がその推進を強調しているため、助成金や補助金も用意されています。たとえば、ものづくり補助金、IT導入補助金、人材開発支援助成金、東京都のDXリスキリング助成金などがそうです。また厚生労働省が個人向けの教育費用をサポートする、教育訓練給付制度もあります。これらのお金を活用することで、リスキリングを加速することをお勧めします。

まとめ

年功序列・終身雇用の時代は終わろうとしており、デジタル人材の市場価値が高騰しているのと同時に、非デジタル人材は解雇の対象になりつつあります。不足しているデジタル人材をどの企業も採用で確保しようと考えると、壮烈なコスト競争になってしまうだけで、日本社会全体のデジタルスキルの底上げは図れません。
だからこそ政府機関もリスキリングの重要性を強調しています。また先進的な企業では数年前から取り組みを始めて、既に一定の成果を出しています。デジタル人材の採用競争よりも、業界や業務を熟知している既存人材へのデジタル教育投資のほうがずっと合理的だと先進企業が証明しているのです。
リスキリングにおいては、継続的な取り組みが重要です。デジタル技術は日々進化しているからです。新しいスキルを日々追い立てられるように獲得していくことになるわけですが、自分がしていることの意味や目的を理解できなければ継続することは難しいでしょう。
企業が何を価値と考えていて、どのような社会を目指すのか、その中で企業が果たすべき使命は何なのかをまず理解することが必要です。そしてこれらが現在の中長期経営計画とどのように結びつき、今年度の戦略に落とし込まれているのか、そして戦略実現のために従業員に何を求めているのかが理解されて初めて、リスキリングへのモチベーションにつながるのです。
要するに、企業活動が「自分ごと」と捉えられてこそのリスキリングだと言えます。リスキリングが活発化するためには、企業理念の明確化とそれにひもづいた戦略・戦術の立案が重要なのはもちろんです。一方で、各従業員のキャリア設計・人生設計を大切に考え、適切かつ公正な人事評価を実施することもそれに劣らず重要ではないでしょうか。
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リスキリングに関するおすすめ研修

社内でリスキリングを推進するためのおすすめの研修をご紹介します。
株式会社アイ・ラーニング
ビジネスパーソンのためのデジタルリテラシー基礎
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こんな人におすすめ
入社1~5年目の若手の方
キーボード操作の基本を身につけていることが望ましい
到達目標
現在のIT利活用において必須の用語や概念を理解する
日常業務における効率的なPCやITツールの操作や活用方法を習得する
料金
66,000円
研修形式
対面/オンライン研修
サイトURL
株式会社インソース
ChatGPT×Pythonプログラミング研修~自動化・データ分析編
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リスキリングとしてITスキル・データ分析力を磨きたい方
到達目標
ChatGPTの作成したPythonのプログラムを適切に修正できるようになる
自社の営業データや人事データを分析するアプリ作成ができるようになる
料金
会員 188,500円
一般 203,500円
研修形式
対面/オンライン
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